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長野地方裁判所 昭和53年(わ)34号 判決

裁判所書記官

遠藤工

本籍

長野県諏訪市末広三、〇〇五番地

住居

同県同市末広三番一二号

会社役員

伊藤兵庫こと

伊藤兵五

昭和六年二月六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官渡辺繁年、同玉井直仁出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、〇〇〇万円に処する。

被告人において右罰金を完納することができないときは金五〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、長野県諏訪市末広三番一二号において、中部電機製作所の名称で音響機器切換装置の製造販売業を営むかたわら、営利を目的とした株式の継続的売買、不動産の賃貸等により所得を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和四九年分の総所得金額が二、六二九万二、八六七円で、これに対する所得税額が一、〇八七万一〇〇円である(課税所得金額及び税額の計算は別表(一)記載のとおり)にもかかわらず、昭和四九年中から仮名の銀行取引口座を使用して、前記事業に関する売上金、不動産賃貸に伴う権利金、株式の配当金等を右口座に入金し、また株式の売買を仮名で行い、かつ株式名義人を適宜仮名のものに分散するなどして、所得を秘匿したうえ、同年分の所得税の確定申告期限である昭和五〇年三月一五日までに、同市清水二丁目五番二二号諏訪税務署において、同税務署長に対し、法定の確定申告書を提出しないで、右期限を徒過し、もつて、不正の行為により、昭和四九年分の右同額の所得税を免れ、

第二  昭和五〇年分の総所得金額が六、二三四万六、七二七円で、これに対する所得税額が三、二二三万一、九〇〇円である(課税所得金額及び税額の計算は別表(二)記載のとおり)にもかかわらず、昭和五〇年中から前記同様の手段・方法により所得を秘匿したうえ、昭和五一年三月一五日前記諏訪税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が給与所得の一四四万四、六〇〇円だけで、これに対する所得税額が六万五、二〇〇円である旨金額過少で虚偽の所得税の確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により昭和五〇年分の所得税差引三、二一六万六、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示第一及び第二の各事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  被告人の大蔵事務官に対する供述調書(質問てん末書)一〇通

一  大蔵事務官金子一男ほか三名共同作成の太陽神戸銀行諏訪支店調査関係書類

一  橋本雅彦作成の答申書二通(各昭和五一年一二月一一日付)

一  右同人作成の証明書(昭和五三年一月一三日付)

一  湯沢信の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官渡辺達雄ほか一名共同作成の諏訪信用金庫上諏訪支店調査関係書類

一  山岡喬作成の答申書二通(各昭和五一年一二月九日付)

一  右同人作成の証明書(昭和五三年一月一二日付)

一  宮坂隆平作成の供述書

一  右同人の検察官に対する供述調書

一  市川清梅作成の答申書(昭和五一年一二月三日付)

一  右同人作成の供述書(同年同月九日付)

一  右同人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官坂本英雄ほか二名共同作成の八十二銀行諏訪本町支店調査関係書類

一  武井厚隆作成の答申書(同年同月一〇日付)

一  検察事務官山中勝弘作成の捜査報告書

一  諏訪税務署長作成の証明書二通(昭和五二年二月四日付及び七日付のもの)

一  山本孝志の検察官に対する供述調書

一  笠原邦義の大蔵事務官に対する供述調書(質問てん末書)二通

一  右同人作成の答申書

一  右同人の検察官に対する供述調書

一  北沢孝道の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  大野義恵の検察官に対する供述調書

一  藤原千歳の大蔵事務官に対する供述調書(同年一二月九日付)

一  右同人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官木村徹男作成の売上調査書

一  石塚庸三、岩部憲治、興津隆、堀田育男、南部昭夫、谷田正治、小野貞男作成の各答申書

一  大蔵事務官松本文二作成の製品棚卸調査書

一  同木村徹男作成の仕入、外注費調査書

一  北井敏久、伊藤孝勇、七島吉之助、嶋田正三、藤森友雄、鶴見英彦、岡崎昇作成の各答申書

一  伊藤孝勇の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官木村徹男作成の経費調査書

一  宮沢栄一郎作成の答申書

一  大蔵事務官木村徹男作成の減価償却費及び未償却残高調査書

一  三浦憲作成の答申書

一  右同人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官木村徹男作成の借入金残高及び支払利息調査書

一  三原田守男、両角隆士の検察官に対する各供述調書

一  丸茂一市作成の答申書

一  諏訪税務署長作成の証明書三通(昭和五二年一二月二二日付、昭和五三年一月三〇日付、同年二月二日付のもの)

一  検察事務官古井直人作成の捜査報告書

一  押収にかかる仕入帳一冊(昭和五〇年一月一七日アルガ化工で始まるもの)(当裁判所昭和五三年押第四八号符号一)

一  同伊藤歯科決算基礎資料メモ一綴(前同押号符号四)

判示第一の事実につき

一  山岡喬作成の答申書(昭和五二年三月二三日付)

一  大蔵事務官早乙女明ほか二名共同作成の諏訪信用金庫本店営業部調査関係書類

一  武井厚隆作成の答申書(一)(昭和五一年一二月九日付)

一  南部昭夫(昭和五二年三月四日付)、ヤギシタ電機(株)経理部秋山、中川令郎、庄田重義、永瀬建一、落新平、前崎重治、北村誠利、高橋一作成の各答申書

一  有賀一夫、岡谷電機産業(株)、小野富三雄、川口茂、渋谷和男、小松貞義、柿沢吉郎、信州電気産業(株)、鈴木展寧、藤森俊和、小川雅雄、植前良平、平林善正、矢内茂美、大家守、瀧野丈、波多野栄、河合洋右、浜吉興、小口範男、中村只雄、森松電子工業(株)、片倉昭男作成の各答申書

一  諏訪市長作成の証明書二通(昭和五二年二月三日付及び同年同月七日付)

一  諏訪地方事務所長作成の証明書(同年一月三一日付)

一  寺島敦史、岩本節治、滝沢二介作成の各答申書

一  諏訪税務署長作成の証明書(昭和五二年二月七日付)

判示第二の事実につき

一  武井厚隆作成の答申書(二)(昭和五一年一二月九日付)

一  藤森昌美作成の証明書(昭和五三年一月一二日付)

一  上条栄一郎作成の供述書

一  右同人の検察官に対する供述書

一  大蔵事務官藤沢範男ほか二名共同作成の長野相互銀行諏訪支店調査関係書類

一  飯島行雄作成の答申書

一  上条進の検察官に対する供述調書

一  右同人作成の供述書

一  藤原千歳の大蔵事務官に対する昭和五一年一二月七日付、八日付、昭和五二年九月九日付各供述調書(質問てん末書)

一  久米司郎、武藤輝彦、吉田修司、北原正允、持田光紀、柴屋清人、米村茂樹、清水秋子、中村政之、永長寛一、谷池伸一、畑部政勝、橋本俊夫、鈴木秀人、内田彰一作成の各答申書

一  七島吉之助(昭和五三年一月七日付)、小川明人、中原菊雄、太田栄次郎、安藤成之、中田重男、古橋了作成の各答申書

一  笹良寛の大蔵事務官に対する供述調書

一  上田善太郎作成の答申書

一  大蔵事務官木村徹男作成の株式取引関係調査書

一  検察事務官山中勝弘作成の捜査報告書(昭和五三年三月六日付)

一  大蔵事務官千葉二郎ほか二名共同作成の大和証券(株)松本支店調査関係書類

一  丸田功作成の捜査関係事項照会回

一  丸田功、竹田謙次郎作成の各答申書

一  鈴木光代の大蔵事務官早乙明ほか三名共同作成の大和証券本店営業部調査関係書類

一  右同人の検察官に対する供述調書

一  瀬戸富男の検察官に対する供述調書

一  新井三枝子の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  本田仁子の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官早乙明ほか三名共同作成の立花証券本店調査関係書類

一  請地直次郎作成の答申書三通

一  大蔵事務官金子一男ほか二名共同作成の野村証券長野支店調査関係書類

一  菅原弘作成の答申書五通

一  内山栄輔の検察官に対する供述調書

一  滝沢明の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官金子一男ほか二名共同作成の日興証券甲府支店調査関係書類

一  蒲地靖作成の答申書

一  徳武省三、藤森勝英の検察官に対する各供述調書

一  伊藤美代子の大蔵事務官(四通)及び検察官(二通)に対する各供述調書

一  第二回公判調書中証人武井克夫の証言記載部分

一  証人作道正治、同田仗ひで、同武井克夫、同木村徹男に対する各尋問調書

一  第四回公判調書中証人木村徹男の証言記載部分

一  押収にかかる仕入帳一冊(当裁判所昭和五三年押第四八号符号二)

一  同五〇年電機部品製造収支関係メモ一綴(同押号符号三)

一  同賃金台帳一冊(同押号符号五)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条(一二〇条一項三号)に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、また、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金(ただし所得税法二三八条二項を適用)の合算額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一、〇〇〇万円に処し、被告人において右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については、同法二五条一項により本裁判確定の日から三年間その執行を猶予することとし、訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 小林宣雄)

(一)課税所得金額及び税額計算書

自 昭和49.1.1

至 昭和49.12.31

〈省略〉

〈省略〉

(二)課税所得金額及び税額計算書

自昭和50.1.1

至昭和50.12.31

〈省略〉

〈省略〉

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